この研究のポイント
14,457人を対象とした25の観察研究のメタ解析により、快楽的な空腹感(hedonic hunger)と体格指数(BMI)の間に統計的に有意な正の関連が認められた(相関係数 r = 0.13)。ただし、その効果サイズは小さく、快楽的な空腹感だけで肥満を説明するには限界があることが示唆された。年齢、性別、サンプルサイズによる影響は見られなかった。
どんな研究だった?
2023年1月までに発表された英語論文を対象に、PubMed、Web of Science、Scopusの3つのデータベースから系統的レビューとメタ解析を実施した。快楽的な空腹感の測定には「Power of Food Scale(PFS)」という標準的な尺度を用いた研究のみを採用した。最終的に、健康な成人14,457人を含む25の観察研究(うち24研究は横断研究、1研究はコホート研究)が解析対象となった。22研究は男女両方、2研究は女性のみ、1研究は男女別に解析を行っていた。快楽的な空腹感とは、空腹でなくても食べ物の味や香りなどの報酬的価値に駆動される食欲を指す概念である。
なぜこの結果になったと考えられているか
快楽的な空腹感は近年、肥満の重要な原因の一つとして提案されてきた。PFSの3つの下位尺度(「食べ物が手に入る」「食べ物が目の前にある」「食べ物を味わった」)すべてでBMIとの正の関連が見られたことから、食環境や食物への接触がBMIと何らかの関係を持つ可能性が示唆される。ただし、相関係数0.13という小さな効果サイズは、快楽的な空腹感が肥満に影響する要因の一つではあるものの、他の要因(遺伝、代謝、身体活動、社会経済的要因など)の方がより大きな役割を果たしている可能性を示唆している。
読み解く上での注意
含まれた研究の質が全体的に低いこと、25研究中24研究が横断研究であるため因果関係は不明であること、という2つの大きな限界がある。横断研究では「快楽的な空腹感が高いからBMIが高い」のか「BMIが高いから快楽的な空腹感が高まる」のかを判別できない。また、PFSという自己報告式の尺度に依存しているため、回答者の主観や記憶のバイアスが結果に影響している可能性もある。著者らは、より正確な結論のためには、この関連を主要評価項目とした縦断的デザインの研究が必要だと指摘している。
日常への示唆
この研究は、「食べたい」という欲求が単純に身体的な空腹だけでなく、快楽的な動機にも影響されることを改めて示している。ただし、その影響は思ったより小さい可能性がある。体重管理を考える際、快楽的な食欲だけに注目するのではなく、睡眠、ストレス、運動習慣、食環境など多面的な要素を総合的に見直す視点が大切かもしれない。また、「美味しそう」という感覚に敏感であることが必ずしも体重増加に直結するわけではないことも、この研究の数字は教えてくれる。