研究用語集
論文や本サイトの記事を読むときに登場する主要な研究・統計用語を、専門家でない方にも分かるよう平易に解説しました。 用語に迷ったときの辞書としてお使いください。
研究デザイン
- メタアナリシス (Meta-analysis)
- 同じテーマで行われた複数の研究結果を統計的に統合し、全体としての傾向を評価する手法。 個別研究のバラつきを補正できるため、エビデンスレベルが高いとされる。
- システマティックレビュー (Systematic Review)
- あらかじめ定めた検索戦略・選定基準に従って既存研究を網羅的に集めて評価するレビュー。 メタアナリシスと組み合わせて行われることが多い。
- ランダム化比較試験 (RCT, Randomized Controlled Trial)
- 対象者をランダムに介入群と対照群に振り分けて結果を比較する研究。 ランダム化により交絡因子を均等化でき、因果関係を推定しやすい。臨床研究の「ゴールドスタンダード」とされる。
- コホート研究 (Cohort Study)
- 共通の特性を持つ集団 (コホート) を時間軸に沿って追跡し、特定の要因と結果の関連を観察する研究。 前向き (prospective) と 後ろ向き (retrospective) がある。
- ケースコントロール研究 (Case-Control Study)
- ある病気や状態になっている人 (ケース) と、そうでない人 (コントロール) を遡って比較し、 過去の要因を調べる研究。希少疾患の研究で有用。
- 横断研究 (Cross-sectional Study)
- ある時点における集団の状態を一度だけ測定する研究。短時間で行えるが、因果関係は推定しにくい。
- 症例報告 (Case Report)
- 個別の事例を詳しく記述した報告。仮説生成には有用だが、一般化には適さない。
- プラセボ対照 (Placebo-controlled)
- 実薬の代わりに薬効成分を含まない偽薬 (プラセボ) を投与した対照群と比較する手法。 プラセボ効果を差し引いて真の効果を測定できる。
- 盲検化 / マスキング (Blinding / Masking)
- 対象者や研究者に、誰が介入群か対照群かを伏せること。 単盲検 (参加者のみ伏せる)、二重盲検 (参加者+研究者)、三重盲検 (+データ解析者) がある。バイアスを減らす目的。
統計指標
- p 値 (p-value)
- 「もし帰無仮説 (差がない) が正しいとして、観察されたような結果またはそれ以上の差が偶然に起きる確率」。 一般的に p < 0.05 が「統計的に有意」とされるが、有意 = 重要というわけではない点に注意。
- 信頼区間 (Confidence Interval, CI)
- 測定値が真の値を含むであろう範囲。例えば 95% CI は、同じ実験を繰り返したときに 95% の確率で真の値を含む区間。 区間が狭いほど推定の精度が高い。
- 効果量 (Effect Size)
- 差の大きさを標準化した指標。p 値が「差があるかどうか」を示すのに対し、効果量は「差がどれくらい大きいか」を示す。 代表的な指標に Cohen's d、相関係数 r、オッズ比など。
- 相関係数 (Correlation Coefficient, r)
- 2 変数間の直線関係の強さ。-1 から +1 までの値をとり、絶対値で 0.1 程度なら弱、0.3 で中、0.5 以上で強の目安。 相関があっても因果関係があるとは限らない。
- オッズ比 (Odds Ratio, OR)
- ある要因がある場合とない場合で、結果の発生のしやすさを比べた指標。1 が「差なし」、1 を超えれば要因あり群でリスク増、 1 未満ならリスク減。ケースコントロール研究で多用される。
- リスク比 / 相対リスク (Risk Ratio, RR)
- ある要因への曝露群と非曝露群で、結果が起こる確率の比。1 を超えればリスク増、1 未満ならリスク減。 絶対リスクと併せて評価することが重要。
- 相対リスクと絶対リスク (Relative vs Absolute Risk)
- 相対リスクは比率 (例: 2 倍)、絶対リスクは実数値 (例: 0.01% → 0.02%)。 メディアで「リスク 2 倍」と報じられても、絶対リスクを見ると微小なケースが多い。
- NNT (Number Needed to Treat)
- 1 人を改善させるために何人を治療する必要があるかを示す指標。 NNT = 100 なら 100 人治療して 1 人効果がある、という意味。臨床的意義の評価に有用。
研究の質と限界
- 交絡因子 (Confounder)
- 調べたい原因と結果の両方に影響する第三の要因。例: 朝食と成績の関連を見ると、家庭環境が交絡因子になりうる。 ランダム化や統計調整で対処する。
- バイアス (Bias)
- 研究結果を真の値から偏らせる系統的な誤差。選択バイアス、想起バイアス、出版バイアスなど多くの種類がある。
- 出版バイアス (Publication Bias)
- 有意な結果が出た研究のほうが発表されやすく、ネガティブな結果は出版されにくい現象。 メタアナリシスの結果が実際よりも効果を過大評価する原因になる。
- 再現性 (Reproducibility / Replicability)
- 同じ方法で別の研究者が実験したときに同じ結果が得られるか。 心理学・社会科学を中心に再現性が低い研究が多いことが 2010 年代以降指摘されている。
- サンプルサイズ (Sample Size)
- 研究に参加した対象者の数。小さいと偶然による誤差が大きく、効果を見逃したり過大評価したりするリスクがある。
- 検出力 (Statistical Power)
- 実際に効果がある場合に、それを統計的に検出できる確率。一般的に 80% 以上が望ましい。 サンプルサイズが小さいと検出力が低くなる。
- 利益相反 (Conflict of Interest, COI)
- 研究者が研究結果に関して経済的・人的利益を持つ状態。論文末尾に必ず開示される。 企業資金の研究自体は問題ではないが、結果の解釈には注意が必要。
- 撤回論文 (Retracted Publication)
- データ捏造、重大な手法ミス、剽窃などにより発表後に取り下げられた論文。 引用前に最新の撤回情報を Retraction Watch や PubMed で確認することが推奨される。
その他
- PMID (PubMed ID)
- PubMed が論文 1 本ずつに割り当てる固有 ID。本サイトでも各記事に PMID と原典 URL を付記している。
- DOI (Digital Object Identifier)
- 論文・データなどデジタル資源に付与される国際的な恒久 ID。URL が変わっても DOI から原典にたどれる。
- 査読 (Peer Review)
- 論文が学術誌に掲載される前に、同分野の他の研究者が手法・結果を吟味するプロセス。 査読を経た論文は一定の品質保証があるとされる。
- プレプリント (Preprint)
- 査読を受ける前に公開される論文。bioRxiv, medRxiv などのサーバーで公開される。 最新の知見をいち早く確認できる反面、まだ査読を受けていない点に留意が必要。
- オープンアクセス (Open Access)
- 論文を無料で誰でも読める形で公開する形式。本サイトで紹介する論文は、できる限り本文も無料で読めるものを優先している。
→ 用語と研究方法の関係をもっと体系的に学びたい方は 論文の読み方ガイド もあわせてご覧ください。