この研究のポイント
2026年に発表されたこのレビュー論文は、人間の想像力を支える「デフォルトモードネットワーク(DMN)」の進化的起源を探った研究です。研究者たちは、哺乳類の祖先が新皮質を獲得し、海馬が大幅に再編成されたときに、想像力の神経基盤が生まれたと提唱しています。また、鳥類には哺乳類のDMNと機能的に類似したネットワークが収斂進化で存在する可能性も指摘されました。
どんな研究だった?
これは進化神経科学の視点から想像力の神経基盤を考察したレビュー論文です。研究者たちは、人間や動物を対象とした行動実験だけでは動物の想像力のレベルや範囲を推測するのに不十分だと指摘し、人間の想像力の中核を担うDMNの進化的起源を文献をもとに追跡しました。特に哺乳類系統の基部で起きた神経学的革新、すなわち新皮質の出現と海馬の大規模な再編成に焦点を当てています。これらの構造がどのように平行進化し、現在の想像力を支える神経回路を形成したかを分析しました。
なぜこの結果になったと考えられているか
研究者たちは、新皮質と海馬という2つの脳構造が哺乳類の祖先で同時に進化的変化を遂げたことが鍵だと考えています。両構造は3次元的な組織化、標準的な微小回路の確立、錐体ニューロンの顕著な発達、そして顆粒ニューロン専用の区画の出現といった共通の進化的特徴を示しました。特に海馬の変化については、これまでの研究が記憶の固定化や再生における役割に注目してきたものの、想像力の形成における重要性を過小評価していたと指摘しています。これらの神経革新が組み合わさることで、未来のシミュレーションや創造的思考といった高度な認知機能の基盤が形成されたという仮説を提示しています。
読み解く上での注意
この研究はレビュー論文であり、新たな実験データを提供するものではありません。進化の過程を直接観察することはできないため、現存する動物種の脳構造や行動から過去を推測する形となります。また、鳥類における収斂進化の可能性については仮説の段階であり、今後の検証が必要です。動物に想像力があるかどうかの判断基準についても、行動観察だけでは不十分だと研究者自身が認めており、神経科学的証拠との統合が課題として残されています。
日常への示唆
私たちが日々何気なく使っている想像力——明日の予定を思い描いたり、過去の経験を思い出したり、まだ見ぬ未来を創造したり——は、実は数億年にわたる進化の産物かもしれません。この研究を踏まえると、想像力は単なる「人間特有の能力」ではなく、哺乳類が共有する神経基盤の上に成り立っている可能性があります。ペットの犬や猫が夢を見る様子を観察するとき、彼らもまた進化的に受け継いだ神経ネットワークで何かを「想像」しているのかもしれない、と考えてみる価値はあるでしょう。また、言語との関係についても触れられており、人間の卓越した想像力が言語能力とどう結びついているかは、今後の研究テーマとして興味深いところです。