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Phlebotomus mascittii、中欧全域で分布拡大が判明 — 都市部と森林で活動ピーク

【知ってる?】レジャーや観光でも接する可能性がある「サシチョウバエ」の一種 Phlebotomus mascittii が、ドイツ・オーストリア・ハンガリーなど中央ヨーロッパ全域で確認され、都市部と森林で最も多く見つかることが 2025 年の大規模調査で明らかになった。

この研究のポイント

中央ヨーロッパ5カ国 (ドイツ・オーストリア・チェコ・スロバキア・ハンガリー) を対象に、寄生虫やウイルスを媒介するサシチョウバエ 6 種の分布と生態を調査した結果、最も耐寒性が高い Phlebotomus mascittii がチェコを除く全域に広がっており、7 月に活動がピークとなることが確認された。環境解析では都市と森林が主な生息地で、15 種類の土地被覆タイプと関連が見られた。

どんな研究だった?

2025 年に発表されたこの研究は、既存文献のレビューに加えて現地でのサシチョウバエと齧歯類の捕獲調査を実施し、DNA バーコーディング、吸血源解析、系統地理学的分析、機械学習による環境因子の評価を組み合わせた包括的なフィールドスタディである。対象はドイツ、オーストリア、チェコ、スロバキア、ハンガリーの 5 カ国で、これまで断片的だった中央ヨーロッパにおけるサシチョウバエの分布と生態的要求を明らかにすることを目的とした。調査では 6 種のサシチョウバエが記録され、季節活動、吸血源、病原体保有状況、環境選好性が詳細に分析された。

なぜこの結果になったと考えられているか

論文では、Ph. mascittii が中欧全域に広く分布している理由として、この種が他のサシチョウバエより耐寒性に優れ北方への適応能力が高いことを挙げている。都市部と森林で多く見つかった背景には、人間活動に伴う環境改変や宿主動物 (鳥類や反芻動物) の存在が関連していると推測される。吸血源解析では鳥類と反芻動物の両方の DNA が検出され、Ph. mascittii が幅広い宿主を利用していることが示唆された。また、系統地理学的には南西ドイツのライン川上流域とカルパチア盆地という 2 つの主要な地理的グループに分かれ、過去の氷河期後の再拡散や地形による隔離が影響している可能性が考えられている。

読み解く上での注意

この研究はフィールド調査と文献レビューを組み合わせた網羅的なものだが、チェコでは Ph. mascittii が確認されておらず、サンプリング地点や調査時期の偏りが分布評価に影響している可能性がある。また、サシチョウバエや齧歯類から Leishmania (リーシュマニア原虫) の DNA は検出されなかったものの、Trypanosoma (トリパノソーマ) の DNA が複数検体から見つかっており、病原体保有リスクの評価には今後さらなる調査が必要である。環境因子と分布の関連は統計的に示されたが、因果関係を断定するには長期的なモニタリングや実験的検証が求められる。

日常への示唆

サシチョウバエは地中海沿岸のイメージが強いが、この研究は中央ヨーロッパの都市部や森林でも活動していることを示している。旅行やアウトドア活動で該当地域を訪れる際には、7 月頃の夕暮れ時に虫よけ対策を意識する価値があるかもしれない。また、都市緑地や森林公園といった身近な環境が媒介昆虫の生息地になりうることは、公衆衛生や都市計画を考える上でも興味深い視点を提供する。ただし今回の調査では病原体の感染リスクは確認されておらず、過度な心配は不要である。研究を踏まえると、昆虫媒介感染症のリスク評価には地域ごとの継続的な調査が重要だと言える。


原典情報

  • PMID: 41318587 (PubMed で原文を見る)
  • 掲載誌: Parasites & vectors (2025年)

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